AACR2016 Part 7 さらば安曇野(最終回)
前回までのあらすじ
仲間との再会を果たし、折り返し地点である「白馬エイド」へ辿り着いたとり。
豚汁とオニギリで心と身体を癒した一行は、AACR運営への感謝を胸に、後半戦へと向かう。
残るエイドは二か所、大町美麻エイドと安曇野エイド、そして目指すはその先、FINISHゲートがある松本梓水苑。
後半は下り基調とはいえ、まだまだ道のりは長く険しい。
はたしてとりと仲間たちは、無事にFINISHゲートをくぐることが出来るのか!
AACR2016レポート Part 7「さらば安曇野」
はっじまっるよー。
白馬エイド~大町美麻エイド(25.8km)
白馬エイドからの復路区間は、基本的には往路をなぞりつつも、ところどころで別ルートが設定されています。
エイド間距離は25.8kmと、先の木崎湖~白馬区間よりは短いものの、AACR全エイド中、最も標高の高いエイド大町美麻エイドに向けて、長い登り区間が待ち構える、最後にして最大の難区間、なのですが……。
とり
「復路は下り基調だって聞いてるし、これはもう余裕だな」
行程表をあまり見ていないとりは「後半は下り基調」という情報に惑わされ、すっかり気が緩んでいました。
白馬エイドを抜け、暫く進むと、往路でも走った青木湖~木崎湖の湖畔区間です。
ガーミンさんによると、このあたりで一時、気温39度を記録しています。ガーミンさんは直射日光を浴びる関係で、日当たりが良いと実際より高い気温を表示する傾向にあるのですが、このあたりが、この日の最高気温区間であったことは間違いないでしょう。
とり
「暑い……死ぬ、安西先生、冷たいポカリが飲みたいです」
ボトル用の水は、エイド毎に用意されているのですが、さすがに「キンキンに冷えた水」というわけにはいきません。先の白馬エイドで「やや冷たい」くらいの水を入れて走りだしたのですが、気温の高さで、あっという間に「ぬるま湯」レベルになっています。
おまけに、この湖畔区間には、コンビニや自販機がほとんどありません。
往路と違い、アルプスの山並みに背を向けて走っているので、絶景による精神的ブースとも期待できず、ぬるまったボトルの水を身体にかけながら、ひたすら無心にペダルを回します。
青木湖と木崎湖の間の、2kmほどの坂道。往路では気持ちの良い下り坂でしたが、当然復路では登り坂です。
とり
「(ぜーはー)下り基調とはいったいなんだったのか……」
アウターでガシガシと登っていく頭のおかしい うし と、32Tのスプロケを生かしてスルスルと登る Kindle の背中を見送り、貧脚鳥はインナーローで乗り切ります。
※【32T】
○Tは、ギアの歯数。後輪のギアの歯数が大いほど、ペダルは軽くなり、登りが楽。
ロードバイクでは一般的に25T~28Tが一番軽いギアなので、32Tはもの凄く軽い。
ちなみにこの日のとりは27T。旧型のとりの車体には、32Tは取りつけられないのだ。残念。
そして坂を越え、木崎湖畔……。
うし
「自販機発見!」
「よっしゃ、水水(ポチー)」
とり
ようやく見つけた自販機で冷たい飲み物を買い、喉を潤す一行。
とり
「(ゴクゴク)うめええええ、生き返るー!」
うし
「とりさんとりさん、これいらない?」
とり
「おまw、何買ってんのwww」
まさかのホットコーヒー。そしてこの笑顔である。
うし
「ボタン押し間違えたww」
所詮畜生には自販機という文明の利器は使いこなせないようである。
とりたち一行が自販機前で休憩をしていると、後続の参加者が次々と自転車を止め、自販機に群がっていきます。考えることは皆だいたい同じですね。ホットコーヒー買ってる馬鹿はいませんが。
で。
自販機で買った水をボトルに入れ、再び走りだす一行。
そして、美麻エイドへと続く復路最大の登り区間へ差し掛かります。
とり
「一つ確認したいことがある」
うし
「ん?」
とり
「この坂が最後の坂だな」
うし
「(きつい坂は)これで最後だよ」
とり
(きゅぴーん)
この坂こそが、AACR最後の敵。
高低図でもわかる通り、第五エイドの先は、逆に怖くなるレベルの下り坂。
ならば!
「ば、馬鹿な!とりがこの速度で坂を登っているだと……!」
うし
「な、なんだってー!」
そう、私は、ロングライドで「足が尽きる」ことを恐れていた。
ビワイチでは、体調不良もあったとはいえ、後半で足が尽き、20km/h巡行すらままならない状態になってしまった。アワイチでも、後半は完全に力尽き、ひたすら曳いてもらうだけの状態となっていた。
平坦のビワイチ150kmですら足が尽きるのに、アップダウンの激しいAACR160kmを走り切れるのか。それが私の最大の懸念だった。
そこで、私は序盤から終始「足を使わない」ことを最重要課題とし、坂道でちぎられても無理をしない、平坦で巡行ペースが落ちてもがんばらない、速度を上げるのは下りだけ、と自らを律して来た。
だが、ここに至り、残り距離は50kmほど、そのほとんどが「下り」!
もはや足を残す必要無し!
「こいつ、ここまで足を残してやがったのか!」
うし
「これがとりさんの真の姿!」
-5分後-
チーン。
多少足が残っていたところで、登坂速度自体がそんなに上がるはずもなく。
ましてやアウターで坂を登る変態いついていけるはずもなく。
大方の予想通り、途中であっさりとちぎれながら、なんとかエイドにたどりついたのでした。
大町美麻エイド PM 1:00
スタートから115.3km、コース中で最高標高地点にあるエイドです。
木崎湖畔からの登坂路は、最大斜度10%程度でしょうか。150km走ってからの登坂なので、体力的には大変ですが、十三峠で10%以上の坂に慣れていたおかげでしょうか、足には余力を残して登り切ることができました。(ちぎられましたが)
高低図からも、ここからはひたすら下りであることが見て取れます。
そしてお待ちかねのエイド提供食はこちら。
TOHU!
ここに来てまさかの豆腐。こだわり豆腐の冷奴。
これが序盤に提供されたのなら「なんだ豆腐か」で終わったところですが、午後になり暑さはピーク、坂を登り、ほてった身体に冷たい豆腐。
これぞまさに至高の豆腐。
やはりAACR運営は神なのか!
そしてもちろん、AACRのエイド食は隙を生じぬ二段構え。
なんだこれ!!
パン、オニギリ、ヨウカン、豚汁と、視覚的にわかりやすいものばかりのAACRエイド食の中、異彩を放つこの正体不明感。
パッと見ではタコせんべいかと思いましたが、そば粉で作った柔らかめのせんべい(クレープ?)に味噌を塗って食べる、蕎麦うす焼きというものです。
見た目は正体不明ですが、素朴な味でおいしいです。
味では第二エイドのネギ味噌オニギリ、癒しでは第四エイドの豚汁に及ばないものの、ユニークさで際立つエイドですね。
大町美麻エイド~安曇野エイド(29.2km)
ここから第六エイドである「安曇野エイド」までは、29.2kmとエイド間距離こそ最長ですが、標高差にして300m以上を一気に下る、全行程最大の下り区間です。
とり
「あとはもう下るだけ、もう何も怖くない」
とり
「さぁ下りだー……!?」
とり
「なんで登ってんの!?」
これから下ろうと思っているときに予想外の登り。安心してから叩き落す。なんという謀略でしょう。
とり
「牛!謀ったな牛!」
うし
「しらんがな」
で。
安曇野エイド PM 3:00
長い長い下り坂を一気に駆け下り、ゆるやかな下りの市街地を抜け、到着した第六エイド、これがAACRの最終エイドになります。
下りの割に時間がかかっているのは、お腹が減って途中のコンビニで自主エイドをしていたせいですね。
スタートからは144.5km。ここまで来れば残りは20km弱。十分に余裕を持ってゴール出来る時間です。
とはいえ、流石に疲労が溜まってきているのも事実。ここは安心のAACRエイド食でゴールに向けてしっかりと英気を養いましょう。
期待に胸膨らむ最後のエイド食はこちら。
リンゴジュースとだったんクリームクランチ。
あれ?
一応二段構えではありますが、ちょっと ショボい シンプルですね。
とり
「超絶うまいジュースだったりするんだろうか(ごくごく)」
「普通なだな」
うし
「普通だね」
とり
「クランチも普通だな(もぐもぐ)」
実に普通!
第二~第五エイドまでが充実していた分、最後にちょっと拍子抜けした感がありますが、ここまで140km以上走ってきて疲れた参加者の胃袋を慮ってのことでしょう!
とり
「しかし明らかにエネルギー不足なので梅丹飲んどこう(ごくり)」
※【梅丹 / Meitan】
サイクリストには定番の補給食。どろりとした液体。美味くは無い。
コンパクトで手軽にエネルギー補給が出来るので人気は高い。美味くは無い。
残りわずからだから大丈夫だろう、と、補給を怠ると、最後にハンガーノックをおこし、終わった後にも疲れを溜める羽目になるので、最後まで補給は大切です。とりは過去に何度も同じ過ちをおかしてようやく学習しました。(鳥頭なので)
そう言う意味では、第五~第六エイドに、もうちょっとエネルギーになるエイド食が欲しいところですね。
安曇野エイド~松本梓水苑(19.3km)
始まりがあれば終わりがある。
長かった160kmの道程もいよいよ最終区間。残る20kmは、今日一日の思い出を噛みしめながら、ゆっくりと走るパレードランのようなもの。
そう思っていた時期が私にもありました。
とり
「さっき最後の登りだっつったの誰だよ!!」
うし
「長い激坂はもう無いって意味だよ」
とり
「夕飯はお前のおごりな」
うし
「理不尽すぎる!!」
最後の最後になって、地味にきつい坂が連続し、疲れた身体にダメージを与えていきます。
そういえば「ろんぐらいだぁず!」でも最後の坂には苦労していたな……と、今更ながらに思い出しましたが、手遅れでした。
とはいえ、これが本当にこれが最後の坂、私がえっちらおっちらと登っていると。
うし
「7%以下の斜度ならアウタートップで登れることに気が付いた(ガシガシ)」
とり
「あたまおかしい」
変態が変態レベルを上げていました。
そしてようやく、最後の登り区間を終え、今度こそパレードランだと思ったその時、とりに異変が……。
とり
「目が! 目がぁぁ!!」
うし
「どうしたとりさん!」
突然、目に激痛が走り、緊急停止。
どうやら顔に塗っていた日焼け止めクリームが、汗と一緒に流れて目に入ったようです。
ボトルの水で目を洗い、目薬をさして、なんとか痛みは和らぎましたが、この後も数時間はずっとヒリヒリしたままでした。
皆さんも、日焼け止めを目より上に塗らないように気を付けてくださいね。
で。
ーPM 4:30ー
幾多のトラブルを乗り越えた末、ついに、松本梓水苑が見えてきました。
ここでも無駄に時間がかかっているのは、「お腹がすいたけど、どうせゴール地点には食べ物は売ってないだろう」と、ゴール近くのコンビニで自主エイドをしていたせいです。やっぱり後半はエイドだけだと食料不足気味ですね。
ちなみに、第三エイドでの合流後、道中はほぼ、うしが一人で先頭を曳いています。
にも関わらず、「なんだか走り足りない」などとのたまう変態っぷり。本当にこいつは初心者なのでしょうか。
ともあれ。
とり
「うし……、ここまでありがとう」
うし
「ん?」
とり
「そして、さようなら!」
うしを追い抜きスパートをかけるとり、まさに外道。
まぁ冗談ですけどね!!
GOOOOOAL!!
あ、抜け駆けはせず、ちゃんと三人でそろってゲートをくぐりましたよ。
フィニッシュ指定時間の30分前なので、既に大多数の人はゴールしているはずですが、会場はまだまだ人であふれ、賑わいをみせていました。
写真を撮り忘れてしまいましたが、ここで完走証と一緒に、タイ焼き(おめでタイ焼き)と水がもらえます。
貨車
「おかえり」
とり
「貨車!無事だったの……か?」
とり
「……あまり無事ではなさそうだ」
貨車
「大丈夫、ちょっと肋骨が折れてるだけだよ」
肋骨が折れてどのあたりが大丈夫なのかわかりませんが、ともあれ、第一エイド前でバラバラになって以降、ようやく四人そろう事が出来ました。
記念写真はもちろん四人で撮影。
共に苦難を乗り越え、彼らの友情はより強固なものとなったことでしょう。
とり
「さて、帰るか」
「で、誰が運転するんだ?」
貨車を除く三人に緊張が走る。
後泊の宿はとっていないので、今日はこのまま名古屋まで帰らなければいけませんが、160km走ったあとの長距離運転は誰だって避けたいものです。
ちなみに、名古屋から来るときは貨車とKindleが交代で運転していましたが、どう考えても貨車は運転ができる状態ではありません。
とり
「すまん、俺はビンディングシューズしか無いから無理だわ」
とりはKindleから回って来たパスボールを華麗に回避。
うし
「あ、俺も」
続いてうしもスルー。
強固になったハズの友情も、過酷な現実の前にはもろいものです。
「よーし、靴買いにいくか」
AACRは終わったけれど、旅はまだ終わらない。
おうちに帰るまでが遠足なのです。
で。
この後、結局ホームセンターでサンダルを買ったうしととりが交代で運転して名古屋の貨車邸へ戻り一泊、そして翌日には解散し、とりは輪行で大阪へ帰還するのですが、蛇足になりそうなので割愛とし、全7PartにもなってしまったAACRレポートは、これにて最終回とさせていただきます。
途中からはレポートだか茶番だかわからない感じになっていましたが、最後までお付き合いありがとうございました。
プロローグ!
長い道のりを超え、ようやく終わりを迎えたAACR。
しかし、AACRだけで記事を7話も引っ張るブログは見たことないぞ、大丈夫かこのブログ。AACRの終わりがブログの終わりとならないことを祈って、とり先生の次回作にご期待ください!
とり
「やれやれ、これでやっとローラー台を回せる」
-完-
◇◆◇◆◇◆◇
モチベーション維持の為にブログ村に参加しています。
よろしければ下のバナーをワンポチください。